AIと業界横断データが変える不正検知の未来
― 日本における IDN(Insurance Data Network)活用の展望 ―
1. なぜ今、業界を挙げた取り組みが必要なのか
これまで保険金請求の不正検知は、各社が個別にシステムやプロセスを強化してきました。しかし、医療機関や修理業者などが複数の保険会社をまたいで組織的に行う「クロスキャリア不正」は、一社のデータだけでは全体像が見えず、業界共通の大きな課題となっています。こうした不正の放置は、支払いコストの増大を招くだけでなく、保険制度そのものの信頼性を揺るがしかねません。
2. IDN(Insurance Data Network)とは?
IDNは、米国をはじめとするグローバル市場で豊富な実績を持つ、業界横断的なデータ連携の枠組みです。各社が保有する情報をネットワーク化することで、以下の価値を提供します。
- 広域パターンの可視化:自社データのみでは検知困難な、特定業者による複数社への重複請求や不審な動きを、他社データとの照会により迅速に特定します。
- 安全な情報共有基盤:機密情報やプライバシーには触れず、「統計データ」や「異常のサイン(シグナル)」のみを共有します。そのためセキュリティを万全に守りながら、現場ですぐに対応ができる精度の高い分析を可能にします。

3.IDN 導入によって期待できる変化
本ネットワークは、Shiftの不正検知ソリューションを導入されているお客様同士が連携することで、個社単位の取り組みにさらなる付加価値をもたらします。
- 検知精度の向上:業界全体の知見をアルゴリズムに反映。組織的な不正の早期発見を可能にするとともに、誤検知の低減にも寄与します。
- 支払いコストの適正化:不当な支払いを未然に防ぐことで損害率をコントロールし、健全な契約者のための安定的な保険料水準の維持に貢献します。
- ガバナンスの強化:業界標準のプラットフォームを活用し、不正を許さない強固な防衛体制を構築することで、社会的信頼をさらに高めます。
4. 安全性とガバナンス:機密を守る「分散型」設計
IDNは、中央にデータを集約させない「分散型(Decentralized)」設計を基本としています。また、IDNは既存の保険協会やコンソーシアム等の業界的枠組みと整合し、そうした協会ベースのスキームとも併存・連携して運用することが可能です。
- 必要な情報だけを、安全に共有:詳細な個人情報などは自社内に留め、共有するのは要約された「統計指標」に限定。機密を守りつつ、知見だけを共有できる仕組みです。
- 万全の運用管理:法令遵守はもちろん、各社のルールに基づいた権限管理と監査を徹底。高い透明性と安全性を両立した運用を行います。
5. 米国における先行事例と実績
米国では既に損害保険大手5社のうち4社がIDNに参画しており、大きな成果を上げています。
- 複数社にまたがる不正ネットワークの特定と、迅速な支払い停止措置の実現します。
- 業界横断での情報共有による、不正行為に対する強力な心理的抑止効果の創出します。
6. おわりに:Shiftの役割と次への一歩
Shiftは、高度な不正検知ソリューションの提供に加え、IDNを通じた保険会社間の連携を技術・運用の両面から一貫してサポートいたします。本ネットワークは、各社がつながることで不正抑止の効果を最大化するための、極めて実務的な選択肢です。
まずは、貴社の具体的な課題に合わせたワークショップや、小規模なパイロット設計のご提案から開始させていただきます。お気軽にご相談下さい。
※IDNは「Shift フロード」をご利用中のお客様が追加機能として活用いただけます。